ブックメニュー★「本」日の献立

今日はどんな本をいただきましょうか?

【東京人2019年10月号 特集「大人がハマる!Eテレ」】都市出版 

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今回は雑誌から。

みなさん、Eテレ見てますか?昔は「教育テレビ」といわれていて、主に子ども向け番組が主流でした。

今は時間帯によってはっきり視聴者ターゲットが決まっています。

サブタイトルにもあるように大人向け番組は、例えば勉強熱心な高齢者向けには早朝の時間帯、働いている男性向けにはゴールデンタイム以降の時間の、教養とかドキュメンタリー。私も「100分de名著」とか見ています。

ある時期からこの「教育テレビ」のイメージが変わったのを感じた人は大勢いると思います。『Eテレ』という名称からしてそうだし、イメージキャラクター(?)のミッツ・カールさんの存在もそうだし。

驚いたのが今は放送されていませんが「フランケンシュタインの誘惑」。

子ども向けに科学を賛美する番組は、これまで数多く放送されてきましたが、大人向けとはいえ科学者の”闇”の部分を描き出すのは何となくタブーのような気がしました。

しかし、これが面白い!大人でよかったと思います😎復活を望む番組の1つです(あとお薦めは「植物たちの生存戦略」です😃)。

そもそもこの雑誌を読もうと思ったのが、美輪明宏さんと齋藤孝さんの対談が載っていたからですが、おふたりは子供番組でご一緒です。なので、ブログでは不純な😬大人向けではなく、懐かしいでも現役の子ども向け番組を、貴重な裏方さんの話も交えて取り上げます(人物の肩書は雑誌発行当時のものです)。

 美輪さんと齋藤さんは「にほんごであそぼ」で関係があるんですが(齋藤さんは番組の構成のほうで、出演はされていません)、わたしも記事を読んだのを機に、見始めました。

齋藤さんは「『にほんごであそぼ』はひそかな国民的必須番組になっている」。なんで「ひそかな」なのか😕分かりませんが、謙虚さが出てしまったのか……?

15分番組(ちなみに子供が集中して見ていられる時間が15分で限界だそうです)ですが、出演者がものすごく豪華!いろんなジャンルの文化を担っている人々が出ています。

美輪さんは「落語や漫才にあるユーモアは日本語の真骨頂」といっています。

齋藤さんが美輪さんに出演オファーをしたそうですが、理由がその声。
「美輪さんの(略)声で語られる日本語に価値がある。」

美輪さんは「人間の声には、人を説得するようなカリスマボイスと、自然界のやすらぐようなコスモボイスの二種類がある(略)自然界の声を持っていたのが美空ひばりちゃん。カリスマボイスのほうはアドルフ・ヒトラーとか、日本では小泉純一郎が当選したときのみ持ってたそうです。その両方を持ってるのが私(略)」

言葉を取り上げる番組なので、それを伝える「声」はとても大事でそれこそ主役なんですね。

「声って魂に響」き「言葉が心をつくる」と齋藤さんは言います。

美輪さんは別の場でもよくおっしゃってますが「言葉の使い方が生活そのものになる」。

内容は例えばシェークスピア文楽で演じるのは、単に面白いだけじゃなく「言葉を通じて昔の文化も番組から伝わればいい」との齋藤さんの思いだろうし、異文化融合はEテレのコンセプトそのものだということは、後で取り上げる裏方さんが語っています。

 

私が大好きな人形劇に「ひょっこりひょうたん島」があります。

この分析をされているのは、「にほんごであそぼ」のアートディレクションを担当されている佐藤卓さん。

番組は1964~69年まで放送されました。私が見ていたのはその後のリメイク版で、ドン・ガバチョの声が名古屋章さんでした(これはこれでハマってましたよ)。

佐藤さん曰く「登場するキャラクターの構成が、いい人、悪い人、美しい人、軽い人、真面目な人と、まるで社会を代表する人達が揃っているかのような、実に見事な組み合わせだった」

多様性を重視する現在の価値観がすでに提示されていました。いろんな人がいても「ひょうたん島」という狭い空間の中でまとまっていた。

「現代の子ども向け教育テレビの一つのあり方が、すでにここにあった。」

 

ピタゴラスイッチ」は大人もハマる番組の代表です。

この企画立ち上げから関係されているNHK総括部長の古屋光昭さん。
「2000年代からは大人文化と子ども文化の壁も崩れ、クリエイターの活躍の場所としてEテレが認知されてきた」

古屋さんが書かれた番組企画メモにはこう記されています。
「問題を与えられて解く(問題解決型)ではなく問題がどこにあるのかを発見する(問題発見型)力」

問題解決も考える力になりますが、「発見」しようとする思考は今よく言われている”疑う力”に通じる気がします。

目の前のものごとを鵜呑みにしたら「問題がどこにあるのか」なんて考えもしませんよね。古屋さんの先見の妙に恐れ入ります。

ちょっと気になる言葉が最後に出てきましたが、テレビが時代をつくったんじゃなく、時代に合わせてテレビが変わった、と。

「テレビは、やっぱり「今」のメディア」

テレビの”即時性”を見抜いておられます。”じっくり考える”ことの大切さとは矛盾しますけど……。

NHK編成局編成主幹の中村貴子さんは「ジャンルとジャンルを掛け合わせた番組企画に注目しています」とおっしゃっています。

例えば科学のキーワードを使って俳句を作り、科学を「情緒的に味わう」番組がありました。

科学は常に新しいものが求められますが、それを精神的に心情的に味わう。真逆な感じが一見するんですがそれをEテレで実現する。

これはさっき書いた「異文化融合」の一種です。話はちょっと逸れますが、実は融合をとっくの昔にやってた人がいます。寺田寅彦です。日本人は割とそういうのが得意なんじゃないか、と勝手に思ってみたりします。

「デザイン あ」を手掛けているNHKプロデューサーの佐藤正和さんは、俳優の片桐仁さんと対談されていますが、そこでの言葉はEテレの番組作りと目標が語られているので取り上げます。

「スポンサーとかのしがらみがなくただひたすら、子どもたちの未来のために、今、何が必要かを考えて番組をつくる。それが、Eテレのいいところ」
「教育番組って、放送が大事なのではなく、(略)あとの行動が大事。「届けきる」というキーワードのもと、人と人が出会い、行動できる場をつくる」