ブックメニュー★「本」日の献立

今日はどんな本をいただきましょうか?

【それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習】阿部広太郎

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タイトルを見て、ハッとさせられました。

知らず知らずのうちに”勝手に決めつけてる”んですよね……いろんなことを。それを日々の忙しさにかまけて、意識を向けないようにしてる自分がいたりする。

それをこのタイトルは指摘しているんです。

著者の阿部さんはコピーライターなので、言葉がウマいというか、文章が読みやすいというか。作詞もされているので、ところどころ詩のような感じ。あるいはご自分の仕事ぶりなどを、この本の主題に絡めて書かれているので、エッセイとしても読めます。

私は始め自己啓発本として読もうとしました。阿部さんは自己啓発というより「自己解釈」本として書いています。

解釈。これが本書のキーワード。ニーチェの言葉からきています。

阿部さんは人懐っこい人かなーと感じたのは、導入部分の最後に「一通の『招待状』をあなたに渡したい」と書いていること。

解釈を使って、このコロナ禍(コロナに限定してはいませんが)を一緒に乗り切っていきましょう、ということなのです。

長年読書してきて「招待状」という表現に初めて出会ったような気がします。

本書は”名言集”としても読めるかな、とも思いました。実際”しゃれた”言葉も多かったです。読者対象は若い人かもしれない。

 解釈とはぶっちゃげ、発想の転換です。ニーチェはこう言っているそうです。

事実というものは存在しない。
存在するのは解釈だけである。

ニュートンが学生だった頃に、ペストの猛威で大学が休校になってしまった時の”解釈”のしかたも興味深かったです。

本書が生まれたきっかけは、阿部さん自身がコロナ禍で、よくわからない”正解”に飲み込まれそうになっている自分に気付き、危機感を覚えたそうです。

だれかの言葉に振り回されなくてもいい。だれかの正解を鵜呑みにしなくてもいい。

「正解のない時代」というより、正解っぽい情報が飛び交う現代。でも、「正解」があった時代ってあったのでしょうか?

正解だと"信じた”ものに、みんなが一団となって進んだ、という気がします。信じたものが文化だったり宗教だったり。

でも今は「個」の時代なのは理解できます。個人的な価値観が重んじられる。

そしてネットやSNSの時代。「個」が自分の価値観を自由に発信できます。

それが情報の洪水を生み、「飲み込まれそうな自分」がいる。そういう構図になっている気がします(といいつつ、自分もこうして情報を発信してるわけですが)。

 

「Z世代」という言葉を初めて知りました😅簡単に言えば若者のことで、1995年から2010年の間に生まれた世代のことだそうです。

いつも若者が時代をつくるんですね。阿部さんは彼らをこう評します。

Z世代を知ることは、新しい価値観を知ること(略)つまり、個と社会で、安定と冒険で揺れる価値観を持つ

社会の一員としての自覚を求められる歳になりつつも、物心ついた時から個として存在できる環境にもある世代です。「揺れる」というのは新しい何かが始まる時によくあることです。

でも”完全”に個になっちゃったら、その社会成り立つのかな……。

ここで面白い”名言”を一つ。

流行は若者からはじまり、政治家で終わる 

阿部さんはどこで聞いたか分かりませんが、言い得て妙、ですね😁感覚として理解できます。

”すえは博士か大臣か”って言われてた時もあったのに、今や頭の固い大人の象徴です。

 

阿部さんは職業柄か、言葉をとても大事にされています。「言葉の企画」というセミナーを主催されているそうです。

セミナー参加者に「違和感」をイメージする言葉を募ったそうで、その中からいくつか載せています。私はこれにビビっときましたが皆さんはどうでしょう?

違和感とは、大きめの靴

自由律俳句みたいですね😁これも感覚として伝わってきます。

違和感を取り上げたのは意味があって、これが感じられるからこそ、飲み込まれそうな自分に気付けるんです。なにか「もやもや」している、という表現もでてきます。

阿部さんはまた、いろいろなものに名前を付けてみよう、と勧めています。

”思考地図”という言葉を聞いたことがありますが、さまざまな感情のありようをシェアハウスに譬えてるのが今風というかおもしろい。

自分の頭の中に、思考の部屋が何部屋かあるとする。

「希望くん」も「不安さん」も住んでいる中で、時に存在感が大きくなるネガティブな同居人と、解釈することで程よい距離感で付き合っていきたい。

ネガティブだからと排除しない。それも一つの人格として認める。

「ああ、君か」と、心の中で暴れている感情を把握する。 

感情を擬人化することで、自分自身を確認しやすくなります。「ああ、君か」という呼びかけがとても暖かくて、優しいんです。

なぜそう感じるのか、ちょっと自分で分からなかったんですが、ネガティブなものって、それだけでみんなに敬遠されますよね。

”イライラ君”はひょっとして寂しがっているんじゃないか?孤独を感じているかもしれない。

それが呼びかけられることによって、安心感が得られるんじゃないか?そして、暴れる意味が徐々に消えていくんです。

本書で学んだ私なりの「解釈」の一つです。

自分を唯一無二の「親友」だと捉える

自分という存在とは腐れ縁だ。逃げられない