ブックメニュー★「本」日の献立

今日はどんな本をいただきましょうか?

【思考停止という病】苫米地英人

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思考停止が病って比喩じゃなくて、確かにそうだと思うんです。だからタイトルに惹かれました。

著者はこう言っています。

思考を生命現象として捉える

 生命現象が行われなければ、やがて存在が危うくなるのは当たり前ですね。

さらに「思考ができるようになったのは(略)脳の進化」のためとも言います。

進化の跡が思考となって表れる、ということでしょうか。

思考は人間だけの能力(脳力?)と苫米地さんは言います。考えることそのものがヒトとして生きているということです。

でも今、日本人はこの考える力が落ちてきている、と著者は危機感を抱いています。私もそう思い、本書を手に取ったわけです。自分も含めて、なんと思考力が落ちてきていることか!

 著者は考える力が弱い理由を3つ挙げています。

前例主義→何かを行う時、過去のやり方・結果を引き継ぐ考え方。
「ルールに縛られ、前頭前野を使うようなクリエイティブな思考が働きません」

前例主義は楽ですから。人間はほっとけばラクな方に行きたがります。これは「現状の最適化」ともいえて、まぁ現状維持ですね。

知識の不足→知識がなければ見えていないことばかりになる。そもそも考える材料が足りないことになります。

本書で苫米地さんは再三、知識を得ることの重要性を説いています。

民主主義において、国民の多くが自分の頭で考えられないのは、非常に危険

 ③ゴールがない→夢や目標と言い換えてもいいですが「あなたが本気で成し遂げたいこと

できるなら(いや、この方がいい)自分以外の何かのためのゴールを設定できれば、そのために情報や知識を得ようとする意思も生まれ、現状を抜け出そうとする力が湧いてくるのです。

ただし注意することは「ゴールを達成した瞬間に、思考は止まる」ということ。止まったら大変です!生命現象ですから。

燃え尽きないようにするには……、そうです、ゴールは複数設定がいい。

しかも現状から遠く、なかなか達成できなさそうなものを設定するのです。

 

思考ができないことの怖さは、②で書いた「危険」があるためですが、具体的には

他人の情報を取得したのが、自分の思考になってしまっているのです。

奴隷の人生。

自分の考えたことだ!と思い込んでいたことが、実は”だれかの正解”だったりする……。

考えることの一歩は、他の自己啓発本にも書かれていますが「常識を疑うこと」。

普通、ノーマルなことが果たして正しいことなのか?

疑うことから、思考は動き始めます

苫米地さんは「現状を肯定することは、過去の世界で生きること」と自己肯定にちょっと批判的です。

肯定ばかりしてると、過去に縛られて現状から抜け出せない、ということでしょう。前例主義です。 

さらに「解釈」も否定しています。これは阿部広太郎さんと決定的な”対立”です。

 ヘンな意味でなく面白いですね。阿部さんはコピーライター、苫米地さんは科学者としての立場でものを言っているからでしょうか。そんな単純なものではありませんが、解釈にしても自己肯定にしても、バランスが大事です。

考えに偏りがあってはならないのは、両人とも意見が合うと思います。そのために思考し、知識を得るのです。

苫米地さんが解釈をやめようと言う理由は「認知バイアス」が生まれるためとします。

認知バイアスとは「先入観や希望的観測によって、事実や情報をねじ曲げる」もの。

「バイアスが生まれるのは、解釈や情動に振り回されるから」

苫米地さんは解釈を、先入観や思い込みと見ているようです。


知識を得る方法はいくつかありますが、苫米地さんはご自分の読書術を披露しています。やっぱり、読書が一番いいです!

ここで苫米地式読書術を。といっても意外なものはなく、読書術が書かれている他の本と実はほぼ同じです。

まずは、文面通り読む。わからない部分は飛ばし、主張している意図をとらえる。

本書は横文字が多く(そして科学的な事からいきなり、仏教や釈迦の話になるのも最初は!でした)、ちょっと読みづらいんです(私は電子書籍で読んだので、その辺はまだ楽でしたが)。でも著者の意図をくみ取るのが大事です。そこで次につながります。

②著者になりきって読む。他の読書術でこれを読んだ時、ちょっとしっくりこなかったんですが、本書でその理由が分かりました。

「著者が重要だと思っていることが、その理由から結論まで、実に素直に頭に入ってくる

わかってやるのと何となくするのとでは理解度が変わってきます。

③仮説や問い(裏や意図)を持って読む。 仮説を立てること自体、思考していますが「情報というのはたったひとつで存在しているわけではありません。相互関連によって、存在が成り立っている」

私はいままで、情報を得る時はまずたくさんの同種の情報を比較検討するというやり方でした。

しかし著者はこう言います。

情報をたくさん得てから仮説を立てるのではなく、仮説を立ててから調べるのです。これが調べごと、知識を得る際の基本となるルール

③につながるし【東大読書】に書かれていた、仮説を立てて本を読み始めるということと共通します。3つは読書術の王道です! 

 

さて、最終的にどういう思考にたどり着きたいのか?「抽象度が高」くなることです。

抽象思考とは「前頭前野における思考活動全般のこと(略)そもそも思考とは、情報空間における脳の運動行為です」

あくまでも「前頭前野」を働かせる、ということ(それ以外の思考ならだれでもやっています)。

考える力が弱い人(抽象度が低い)というのは、自分の話・主張ばかりします(こういう人いませんか?)。

対し、高い人は

自分のことだけでなく、ものごとを(略)大局的に見られる人

さぁ、ゴール設定のところと繋がりましたね。抽象度を上げればゴール設定も自然と自分以外の誰かのためになっていくのです。

シリアル(直列的)ではなく、大局的であるパラレル(並列的)思考でいきましょう!