ブックメニュー★「本」日の献立

今日はどんな本をいただきましょうか?

【大人のための読書の全技術】齋藤孝

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本書の「はじめに」の最後の行にこう書かれています。

「厳しい現代社会を、ともに生き抜いていきましょう」

「おわりに」の最後の行は、こう締めくくられています。

「私は、今日も本を読んでいます。
一緒に、一つずつ、自分の中の点を増やしていきましょう」

「点」とはスティーブ・ジョブズが講演の中で語ったことから引用していますが(因みに、引用についての効用も本書で解説されています)、私はこの文を読んで、ジーンと来てしまいました😌”ともに” ”一緒に”にです。

今まで読書に関する本を何冊か読んできて、著者は確かに読者を励ましてくれていますが、この文は齋藤先生が、まるで家庭教師みたいにすぐそばにいてくれているみたいに感じられます。

300頁を超える本で先生も執筆するのが大変だったとおっしゃっていますが、本物の読書術をお伝えしたかった、と熱意が伝わってきます。

まず、本とは何か?これ、案外押さえていないとただ字面だけ、眼で追っていく事態になります。

「自分が必要とする知識を、もっとも効率的に吸収して自分のものにできるツールが、『本』」

ポイントは効率的。普通に読んでても本は効率的に知識が得られるものでしょうが、最近の読書術はもっと短時間に読む方法が解説されたものがほとんどでしょう。だからと言って、眼球だけ動かして”ハイ!読みました”ってのは、私は眉唾物だと思っていますが……。

本書でも速読術が載っています。でもはっきり言って、他の本と被っているところもあるので、ここでは齋藤先生ならでは、と思われるものを取り上げます。

先生のベストセラー『声に出して読みたい―』シリーズを今の時点では、実はまだ読んだことがありません。なので音読について興味深く読みました。これは記憶術、です。

精読(熟読とも言えますが)には音読が欠かせない。江戸時代の寺子屋では、この読み方が普通でした。ちなみに、この時代の読書熱はかなり凄かったようです。同じ時代の欧米と比べても、日本の識字率はトップクラスだったとどこかで読んだことがあります。

寺子屋ではまず先生が、意味を踏まえて正しい読み方で読み聞かせる。それを聞いてから子供たちが復唱する。

言葉のどこで意味が切れるのか分かるのと、日本語リーディングの効果があるわけですね。目と耳で覚えられるんです。

文章を本当に理解するには、どこで切るか、イントネーションをどうするかも重要な要素であり、意味のとり方が読みの中に現れる

他の読書術で読んたところによると、ただ眼で読むより、映像とか音とかがあった方が、記憶に残りやすいそうです。YouTubeもウケルわけです。

 そうはいっても、全部音読するのはさすがに疲れます。私も朝と夜に、音読をはじめてみてますが、日によっては疲れを感じます。

そこで「音読したい場所を見つける」のです。実はこの行為も、速読につながります。

ここを読んでみたい、と感じることは、その本の中で自分にとって大事だ、と感じたところ。本のなかのエッセンスです。

先ほど取り上げた効率的とは、”エッセンスを吸収する”ことなのです。

音読すると決めたところを、暗唱できるまで、何度も何度もくり返す……、言葉の響きを楽しむように、歌をうたうように。

先生はお風呂の中でもするそうです。ほどよく自分の声が響き、ノリノリになるそうですよ😁

暗唱できるまでになると、なんかの時、ちょっとした会話をしている時とかにも引用できたりします。

でも暗唱はハードルが高い……(私自身、そう思います😢)。先生はちゃんと考えてくれています。正確でなくとも”こんな感じを言っている”でもいいんです。普通の会話でも、あんな感じ、の話はよくしますよね。ただキーワードは覚えておきます。

引用=教養だといいます。ただ、単に”頭いい”とか”教養がある!”ではなく、自分の表現力を広げることができます。

人間が一人で築ける世界観は、それほど広いものではありません。(略)自分の世界を広げる努力をすべきであり、そのために最も役立つのが読書です

引用は3つほど選んでみるといいようです。その作業は「自分のその作品への関わり方を整理する」行為でもあります。

全体はよく理解できなかったけど、この言葉はなんか引っかかる。引っかかった言葉について考えてみる。ここに読書の意味はある、と言います。

先生の読む本のラインナップは、古典が多い印象です(もちろん現代の興味あるものや、漫画などもお読みになっています)。

長く読み継がれている本を読む意味が書かれていますが、私にとって本書で最も腑に落ちた文章です。

本を読むことで、自分の中に偉大な他者を持てるようになると、視野が大きく広がります。(略)人間の心というのが、実は偉大な他者によって培われた豊かな森である

これが読書する最大の目的の一つだと、目が開かれた思いです。でも別に、何百年も前の人たちだけではないのです。存命中の人々のなかにも、すごい影響力を持っている人も当然いるわけです。そして本を出している人も少なくないのですね。

そういう人の本から貪欲に、エッセンスを吸収する。

最後に読書術とはちょっと外れると思うんですが、大きく頷けた箇所があります。

今はあまり聞きませんが、人生迷ったときに"自分探し”にたとえば旅に出る、とかありましたね。

あれ、すごく違和感を持っていたんです。本書を読んで、斎藤先生もそう思っておられたことが分かりました。

自分はここにいるのですから、探しに行く必要はないでしょう。自分は自分です。(略)自分自身が敵になるような状況は、どんな悲惨な状況になってもありえないと思っています。

究極の自己肯定です。こうなれば、自分探しに時間とお金をかける必要などまったくないのです。

察する通り先生は、それを読書から得られたんでしょう。肝心なことは、名著であったとしても、

自分の全部を明け渡すのではなく、(略)エッセンスを自分なりに咀嚼し、自分の内に取り込むべきだ